現場で学ぶ、本物の技術。マイスター高等学院「大工コース」が育てる日本の未来

はじめに:今、なぜ実践的な職業教育が必要なのか

「高校を卒業しても、現場で使える技術が身についていない」

こんな声を、建設業界や製造業の現場からよく耳にします。日本の地域産業は今、深刻な担い手不足に直面しています。大工、農業、製造業、福祉・介護、飲食業といった、私たちの生活を支える仕事に就く人が年々減少し、社会基盤そのものが揺らいでいるのです。

マイスター高等学院は、こうした危機感から生まれた学校です。「地域産業を担い、労働者不足が加速する日本の未来を変える人材の育成」を使命とし、「日本を守る人材育成の場」として設立されました。

通信制高校と連携しながら、徹底的に実践にこだわった職業教育を提供する。それがマイスター高等学院の特徴です。現在、生徒が在籍している主軸のコースは「大工コース」のみ。このコースでは、単なる作業スキルではなく、社会で本当に活躍できる「現場実務者=マイスター」を育てることを目指しています。

本記事では、大工コースで学べる実践的な技術とは何か、そしてなぜこの教育が日本の未来にとって重要なのかを、詳しくご紹介します。

大工コースの最大の特徴:働きながら学ぶという選択

3年間の有期雇用契約で実践力を磨く

マイスター高等学院の大工コースには、他の学校にはない大きな特徴があります。それは、入学と同時に学院を運営する企業との間で「3年間の有期雇用契約」を結ぶという仕組みです。

つまり、生徒は「学生」であると同時に「働く人」でもあるのです。学校に通いながら、実際の建設現場で大工としての技術を学び、そして収入を得る。この働きながら学ぶスタイルこそが、マイスター高等学院の教育の核心です。

一般的な高校では、座学中心の授業が続き、卒業してから初めて現場に出ることになります。しかし、それでは現場の厳しさや、実際に必要とされる技術が分かりません。マイスター高等学院では、入学直後から現場に立ち、本物の建材に触れ、先輩職人の技を間近で見ながら成長していきます。

収入を得ながら高校卒業資格も取得できる

この働きながら学ぶという形態には、生徒にとって大きなメリットがあります。それは、収入を得ながら高校卒業資格と専門技術の両方が手に入るということです。

通信制高校と連携しているため、大工としての専門技術を習得しながら、同時に高等学校の卒業資格も取得できます。家庭の経済的な事情で進学をあきらめかけていた生徒にとって、これは大きな希望となるでしょう。

また、実際に働いて収入を得ることで、社会人としての責任感や金銭感覚も自然と身についていきます。これは教科書では学べない、人生における貴重な経験です。

現場での経験が圧倒的な差を生む

3年間、毎日現場に立ち続ける。この経験の積み重ねが、卒業後の「即戦力」を生み出します。

例えば、大工の仕事には木材の選び方、刃物の研ぎ方、構造の見極め方など、教科書だけでは理解できない技術がたくさんあります。木材の「癖」を読み取る感覚、道具を体の一部のように扱う技術、これらは現場で何度も失敗し、何度も挑戦することでしか身につきません。

マイスター高等学院の大工コースでは、この「現場での失敗と成功の繰り返し」を3年間にわたって経験できます。だからこそ、卒業する頃には、他の新人とは比較にならないほどの技術と自信を持つことができるのです。

大工に必要なのは技術だけじゃない:志と人間力の育成

技術者に求められる「人間性」とは

大工として、いや、どんな職業でも一流になるためには、技術だけでは足りません。マイスター高等学院では、「志と人間力」の育成にも力を入れています。

現場では、チームで協力して一つの建物を作り上げます。そこでは、先輩職人の指示を正しく理解する力、仲間と協力する姿勢、お客様の要望を丁寧に聞き取る姿勢が欠かせません。どんなに技術が優れていても、人間性に問題があれば現場で信頼されず、長く活躍することはできないのです。

マイスター高等学院が目指すのは、技術と人間性の両方を兼ね備えた「マイスター」の育成です。マイスターとは、単なる技術者ではなく、現場で信頼され、後輩を育て、お客様に感謝される、真のプロフェッショナルを意味します。

YouTubeの「論語物語」で学ぶ人間の基本

具体的な取り組みの一つとして、授業ではYouTubeの「論語物語」を教材として活用しています。

論語とは、約2500年前の中国の思想家、孔子の教えをまとめたものです。「人としてどう生きるべきか」「他者とどう接するべきか」といった、時代を超えて変わらない人間の基本が書かれています。

例えば、「巧言令色鮮仁(こうげんれいしょくすくなしじん)」という言葉があります。これは「口先だけで人を喜ばせようとする人に、本当の誠実さはない」という意味です。現場で信頼される職人になるためには、口先ではなく、誠実な行動が大切だということを学びます。

こうした古典の知恵を現代の職業教育に取り入れることで、生徒は技術の専門性とともに、現場で信頼され、協働できる人間性を育んでいくのです。

社会で活躍するための総合的な力

大工コースで学ぶのは、工具の使い方や構造の知識だけではありません。礼儀、コミュニケーション能力、問題解決力、責任感といった、社会で活躍するための総合的な力を身につけます。

朝、現場に到着したらまず挨拶をする。先輩の話を最後まで聞く。失敗したら素直に謝り、次に活かす。こうした基本的なことを、現場という実践の場で毎日繰り返すことで、自然と体に染み込んでいきます。

これらの人間力は、大工としてだけでなく、どんな仕事に就いても、どんな場面でも役立つ一生の財産となるでしょう。

卒業後の安心:正社員転換と一貫したキャリア

学生時代から卒業後まで、一本の道

マイスター高等学院の大工コースには、もう一つ大きな安心があります。それは、卒業後の進路が明確に示されていることです。

学院の卒業後の進路目標は、当校と提携している企業への就職です。具体的には、3年間働きながら学んだ企業に、卒業後は正社員として転換し、そのまま就職することが想定されています。

つまり、入学から卒業、そして就職まで、一貫したキャリアの道筋が用意されているのです。生徒は3年間で培った技術と人間性を、同じ職場で最大限に活かすことができます。新しい環境で一から人間関係を築く必要もなく、すでに現場を知り尽くした状態で社会人としてのスタートを切れるのです。

「未来創造企業」という信頼の証

卒業後の就職先となる企業は、すべて「未来創造企業」に認定されています。これは、一般社団法人未来創造企業研究所が行う認定制度で、福利厚生、就業条件、労働環境など、一定の基準をクリアした企業のみが認定を受けられます。

つまり、マイスター高等学院の卒業生は、第三者機関によって「働きやすい職場」と評価された企業に就職できるのです。これは、生徒と保護者にとって大きな安心材料となります。

ブラック企業という言葉がニュースで取り上げられる現代において、就職先の労働環境が保証されているというのは非常に重要です。マイスター高等学院では、「社会貢献が実現でき、安心して働ける会社へのご紹介が可能」という形で、生徒の未来に責任を持っています。

長期的に技術を磨き続けられる環境

未来創造企業に就職することのメリットは、安心して働けるだけではありません。長期的に自分の技術を磨き続けられる環境が整っているということです。

労働環境が悪い職場では、技術を学ぶ余裕もなく、ただ目の前の仕事をこなすだけで精一杯になってしまいます。しかし、福利厚生が充実し、適切な労働時間が守られている職場では、心身ともに健康な状態で技術の向上に取り組めます。

大工という仕事は、一生かけて技術を磨き続ける職業です。若いうちに基礎を学び、中堅になれば後輩を育て、ベテランになれば難しい仕事に挑戦する。そうした長期的なキャリアを築くためには、安心して働ける職場が不可欠なのです。

未来創造企業が目指す「21世紀型の企業像」

SSCという新しい企業のあり方

マイスター高等学院の卒業生が就職する未来創造企業は、SSC(サスティナブル・ソーシャル・カンパニー)という21世紀型の企業像を目指しています。

SSCとは、「事業を通じた継続的な社会課題の解決」を第一の目的に掲げる企業です。単に利益を追求するだけでなく、社会にとって本当に必要なことを事業として行い、その結果生まれた経済的価値を適切に分配・再投資することで、企業の持続的な発展に努めます。

例えば、大工の技術は、人々が安心して暮らせる住宅を提供するという社会課題の解決に直結しています。高齢化が進む地域では、バリアフリー住宅の需要が高まっていますし、環境問題を考えれば、長持ちする丈夫な家を建てることも重要です。

大工コースの生徒が習得する技術は、こうした「社会課題解決」というミッションの一部として活用されます。自分の仕事が社会の役に立っているという実感は、働く上で大きなやりがいとなるでしょう。

7つの指標で評価される企業の質

未来創造企業の認定は、「地球」「社会」「地域」「顧客」「取引先」「従業員(家族)」「経営者」という7つの分野の指標に基づいて評価されます。

この中でも特に注目すべきは「従業員(家族)」という項目です。これは、従業員が健康的に働ける環境が整っているか、適切な給与が支払われているか、福利厚生は充実しているか、といった点を評価します。

従業員を大切にしない企業は、未来創造企業の認定を受けることができません。つまり、マイスター高等学院の卒業生は、「従業員を大切にする」と第三者機関が認めた企業で働けるのです。

また、「家族」という言葉が含まれていることも重要です。従業員が家族との時間を大切にできる働き方、家族が安心できる労働環境。こうした視点を持つ企業は、従業員の人生全体を考えてくれる企業だと言えます。

社員の幸福度が高い職場で働く意味

未来創造企業に認定されることで、企業にも大きなメリットがあります。それは、「企業力のアップ・持続可能な企業としての価値」が高まることです。

関係者との信頼関係に基づいた経営を行うことで、社員の幸福度が高まります。幸福度が高い社員は、仕事への意欲が高く、生産性も向上します。その結果、企業の業績も良くなり、さらに働きやすい環境が整う、という好循環が生まれるのです。

また、「働きたい企業」としての価値が高まることで、採用や定着率の向上にも繋がります。優秀な人材が集まり、長く働き続けてくれる。これは企業にとって何よりも大きな財産です。

大工コースで技術を習得したマイスターは、こうした社員の幸福度が高い環境で働くことができます。だからこそ、自分の専門性を長期にわたって活かし、さらに高めていくことが可能なのです。

大工の技術が生み出す「3つの価値」

社会的価値:地域を支える担い手として

大工コースで学ぶ技術は、3つの価値を生み出します。その一つ目が「社会的価値(公益)」です。

地域産業、特に建設分野では、深刻な担い手不足が続いています。ベテランの大工が高齢化し、引退していく一方で、若い世代がこの職業を選ばない。このままでは、家を建てたくても建てられない、修理したくても修理できないという事態が起こりかねません。

マイスター高等学院の大工コースで技術を学んだ若者が現場に出ることで、この担い手不足を解消し、地域社会全体に貢献できます。これは、特定の人や組織だけでなく、広く社会全体に効果が及ぶ価値です。

あなたが建てた家で、家族が笑顔で暮らす。あなたが修理した建物で、地域の人々が安心して生活する。こうした目に見える形で社会に貢献できることは、大工という仕事の大きな魅力です。

関係主体幸福度:信頼関係で結ばれた働き方

二つ目の価値は「関係主体幸福度(共益)」です。これは、企業と従業員が双方向的に価値を提供し合う関係を指します。

企業は従業員に適切な給与や働きやすい環境を提供し、従業員は企業に技術や誠実な働きぶりで応える。この相互の信頼関係が、お互いの幸福度を高めるのです。

大工コースで学ぶ「志と人間力」は、まさにこの信頼関係を構築するための基盤となります。技術が優れているだけでなく、誠実で責任感があり、仲間を大切にできる。そんな人材だからこそ、企業も長期的に大切にしたいと思うのです。

一方的に企業が与えるのでも、一方的に従業員が尽くすのでもない。お互いに尊重し、お互いに成長していく。そんな働き方が、未来創造企業では実現されています。

社会・経済的価値:自分自身の利益も追求できる

三つ目の価値は「社会・経済的価値(未来創造益/私益)」です。これは、企業の継続・成長に必要な経済的達成度であり、同時に働く人自身の利益でもあります。

社会課題の解決を軸とする経営は、結果として経済的な価値も生み出します。地域に必要とされる仕事をしっかりと行えば、顧客からの信頼を得て、安定した収入に繋がるのです。

マイスターは、自分の専門性を活かして社会に貢献しながら、同時に自分自身の経済的な利益も追求できます。社会貢献と自分の幸福は、決して対立するものではありません。むしろ、社会に貢献することで、自分自身も豊かになれる。これこそが、未来創造企業が目指す理想の働き方なのです。

マイスター高等学院の今と未来

開校3年目、初の卒業生は2026年4月

マイスター高等学院は2025年時点で開校から3年目を迎えています。まだ新しい学校ですが、その理念と実践的な教育内容は、すでに地域社会から大きな期待を集めています。

卒業生は2026年4月が第1号生の予定です。まだ卒業生はいませんが、現在在籍している生徒たちは、毎日現場で技術を磨き、人間力を高めています。彼らが卒業し、正社員として活躍する姿を見るのが、今から楽しみです。

初の卒業生たちは、マイスター高等学院の「実験」でもあります。この教育モデルが本当に成功するのか、3年間働きながら学んだ若者が、本当に現場で活躍できるのか。その答えが、もうすぐ明らかになります。

地域社会との繋がり:中学校への出張体験授業

マイスター高等学院は、地域社会との繋がりも大切にしています。その一つが、中学校への出張体験授業です。

中学生に対して、大工という仕事の魅力、働きながら学ぶという選択肢、未来創造企業という新しい企業のあり方などを伝えています。実際に工具に触れてもらったり、簡単な木工体験をしてもらったりすることで、職業としての大工に興味を持ってもらうのです。

「将来何になりたいか分からない」「勉強は苦手だけど、手を動かす仕事は好き」そんな中学生にとって、マイスター高等学院の存在は新しい可能性を開いてくれます。

地域の中学校で体験授業を行うことで、地域に必要な人材を地域で育てるという循環が生まれます。地元で学び、地元で働き、地元に貢献する。こうした地域密着型の教育は、地方創生にも繋がる取り組みです。

これからの展開:農業コースほか、来年以降の開校予定

現在、マイスター高等学院で生徒が在籍しているのは大工コースのみですが、今後は新しいコースの開設も予定されています。農業コースは来年以降の開校予定となっています。

農業もまた、担い手不足が深刻な産業です。高齢化が進み、耕作放棄地が増加している地域も少なくありません。しかし、食料自給率の向上や地域経済の活性化のためには、農業の担い手育成が急務です。

大工コースで培ったノウハウを活かし、農業分野でも働きながら学ぶ実践的な教育を提供する予定です。さらに、製造業、福祉・介護、飲食業といった分野も視野に入れています。

それぞれの産業で、現場の確かな技術と志と人間力を持ったマイスターを育成する。そして、未来創造企業という安心して働ける職場に送り出す。この教育モデルを、様々な産業に広げていくことが、マイスター高等学院の目標です。

まとめ:日本の未来を守る、新しい教育のかたち

マイスター高等学院の大工コースは、単なる職業訓練校ではありません。働きながら学び、技術と人間力を身につけ、未来創造企業という信頼できる職場で長期的なキャリアを築く。この一貫した教育システムこそが、マイスター高等学院の最大の強みです。

3年間の有期雇用契約に基づく実践的な経験を通じて、生徒は現場で通用する確かな技術を習得します。同時に、論語などの古典を学びながら、志と人間力も磨いていきます。

卒業後は、7つの指標で評価された未来創造企業に正社員として就職し、社会貢献と自分自身の幸福を両立させながら働くことができます。大工という技術は、社会的価値、関係主体幸福度、そして経済的価値という3つの価値を生み出し、地域社会全体を支える力となります。

開校3年目を迎え、2026年4月には初の卒業生が誕生する予定です。彼らが現場でどのように活躍するのか、今から期待が膨らみます。また、今後は農業をはじめとする新しいコースも開設予定で、マイスター高等学院の挑戦はこれからも続きます。

地域産業の担い手不足という日本の課題を解決するために、実践的な職業教育を通じて若者を育てる。マイスター高等学院は、日本の未来を守るための、新しい教育のかたちを提示しています。

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