若者流出の原因とは?地方人材育成で防ぐための対策を解説

なぜ若者は地元を離れる?流出の理由と人材育成でできる対策を解説
この記事のポイント
- 若者が地元を離れる「表の理由」と「本音の理由」が整理できる
- 地方人材育成で”流出ゼロ”ではなく”関わり続ける若者を増やす”発想が分かる
- 自社・自地域で明日から実践できる小さな打ち手がイメージできる
今日のおさらい:要点3つ
- 若者流出は「仕事・学び・暮らし」の3つがかみ合っていないサイン
- 人材育成は「地元に縛り付けるため」ではなく「戻れる・関われる理由を作るため」の投資
- 迷ったら「1社×1校×1テーマ」の小さな接点作りから始める
この記事の結論
- 一言で言うと「若者は、地元に”成長できる未来”が見えないから離れます」
- 最も重要なのは、「地元でどんなキャリアが描けるか」を教育段階から見せていくことです
- 失敗しないためには、「Uターンさせる」発想ではなく、「外に出ても関わり続ける線を残す」人材育成に切り替えることです
なぜ若者は地元を離れるのか?
データで見る若者流出の構造
内閣府や総務省の資料を見ると、地方から都市への若者流出は、かなりはっきり数字に現れています。
若者流出に関する数字:
- 高校卒業後に進学・就職で都市部へ出た若者の多くが、そのまま地元に戻らない傾向が続いています
- 地方圏では20~39歳人口の減少率が高く、今後も2040年前後まで若年層の減少が続くと見込まれています
- 中小企業の調査では、「人手不足」と回答する企業の割合が5~6割に達し、地方・建設・サービス業でより深刻です
正直なところ、「うちの地域の若者だけが出ていく」と感じてしまいがちですが、実態は「全国規模で若者が足りない」中での競争です。そのなかで、地方は「仕事の数」「給与」「情報量」で都市部に劣りやすい構造になっています。
実体験① 進路指導室で聞いた”本音のひと言”
数年前、地方の進学校で進路指導の先生に話を聞いたことがあります。放課後の進路指導室。壁には大学パンフレットがびっしり並び、地元企業のパンフレットは一角に少しだけ。
ある男子生徒との会話の中で、以下のような言葉が出ました。
「正直、地元の会社って、名前すら知らないんですよね」
先生が「給料や安定感なら、地元にも悪くない会社はあるよ」とフォローしても、彼はスマホを見ながら「東京の方が面白そうだし、人も多いし」と、どこか他人事のように話していました。
このとき強く感じたのは、「情報量の差」と「イメージの差」が、意思決定を静かに左右しているということ。地元企業は生徒の頭の中で”グレーの箱”のまま、選択肢にすら上がっていない。これでは、地元に残る決断をしろというほうが難しいと痛感しました。
よくある「表向きの理由」と「本当の理由」
若者が地元を離れる理由は、アンケートなどでよく挙げられます。
表向きに出てくる理由:
- 給料が低い
- やりたい仕事がない
- 遊ぶ場所・刺激が少ない
インタビューで深掘りすると出てくる本音:
- 同世代のロールモデルが見当たらない
- 「戻ってきても、やり直せない」イメージがある
- 地元にいる自分を想像すると、どこか”負けた気がする”
よくあるのが、「東京(都市)に行けば何とかなる」という期待と、「地元に残る=選択肢が狭まる」という思い込みのセットです。実は、この「イメージの設計」にこそ、人材育成の余地があります。
人材育成で若者流出を”ゼロ”ではなく”変える”
「出さない」ではなく「戻れる・関われる」に発想を変える
内閣府の地方創生の議論では、「若者の地元定着」だけでなく、「一度外に出た人が戻ってくる・関わり続ける」ことも重要とされています。
有効な取り組みの例:
- 地方大学と地元企業が連携し、地域課題をテーマにしたプロジェクトを通じて「地域で働く面白さ」を体験させる
- 首都圏などに出た後も、インターン・副業・オンラインプロジェクトで地元とゆるくつながれる仕組みをつくる
- Uターン人材の活躍を「見える化」し、後輩世代がロールモデルをイメージしやすくする
正直なところ、「若者を外に出さない」戦略は現実的ではありません。進学や就職で外に出るのは、多くの場合、その人なりの成長意欲の表れです。
人材育成の視点で見るなら、出るときに「戻れる・関われる線」を一緒に描く、外で得た経験を、数年後に地域側がちゃんと受け止められる器を用意する。この2つがポイントになります。
実体験② 「東京に出たら終わり」じゃなかったUターンの話
以前、地元にUターンしてきた30代のエンジニアに話を聞いたことがあります。彼は地方出身で、大学進学を機に東京へ。そのまま都内のIT企業で働いていました。
20代後半になり、「このまま東京で暮らしていくのか、いつか地元に戻るのか」のモヤモヤが強くなってきたと言います。
そんなとき、たまたまSNSで地元の「UIターンフェア」の情報を見つけ、「正直、冷やかし半分」で参加。会場で、地元の中小企業の社長と話す機会がありました。
社長「うちは東京の企業みたいに給与は出せんけど、その代わり”全部任せる”仕事は用意できるよ」
彼「全部、ですか?」
社長「プロジェクト立ち上げから、地元の若い子へのレクチャーまで、ね」
その一言が妙に引っかかり、半年かけて悩んだ末、思い切ってUターン。今は地元企業で新規事業の立ち上げと人材育成を任されています。
「東京に出たことも、帰ってきたことも、どっちもちゃんと自分の選択だったと思えるのがありがたいです」と彼は話していました。
実は、こうした「戻りやすさ」や「関わりやすさ」は、本人だけではどうにもなりません。地域側の準備と、人材育成の設計が必要です。
若者流出を変える人材育成の3つの焦点
若者流出を”人材育成”で変えていくには、少なくとも次の3つの焦点が必要です。
焦点1:教育段階で「地域の仕事」に触れる機会を増やす
- 高校・大学の授業に地元企業が関わる
- 探究学習やPBL(課題解決型学習)で地域課題を扱う
焦点2:若者が「挑戦できる場」を地域に用意しておく
- 空き家活用・観光・デジタル化などのプロジェクトに学生・若手を巻き込む
焦点3:一度外に出た人が「関わり直せる線」を作る
- オンラインで参加できるプロジェクト
- 週末副業・複業として地元案件に関われる枠
よくあるのが、「若者向けイベント」だけで終わる、「移住者歓迎」と言いつつ、具体的な仕事や役割が用意されていないというパターンです。
人材育成として設計するなら、「イベント」ではなく「3~5年の成長ストーリー」をセットで考える必要があります。
企業・学校・自治体が今できる具体的な対策
こういう企業は今すぐ動くべき
以下の状態にある企業は、採用だけでなく「人材育成と地域との接点づくり」に踏み出すタイミングです。
- 新卒・中途問わず、「応募ゼロ」の年が増えてきた
- 若手が3年以内に半分以上辞めてしまう
- 「地元の若者にうちの会社が知られていない」と感じている
内閣府や総務省の事例集でも、中小企業が高校・大学と連携することで、若手の採用・定着が改善したケースが報告されています。
この状態ならまだ間に合う
以下の段階にあれば、今ある取り組みを「育成ストーリー」に組み直すチャンスがあります。
- まだ採用は何とか回っているが、5~10年先の担い手が不安
- 既に学校との連携が少しはあるが、単発で終わりがち
- UIターンフェアやインターンを”とりあえず参加”のままにしている
たとえば、高校1年で地域企業の見学・仕事理解、高校2~3年でインターン・仕事体験、大学・専門学校で地域課題をテーマにした長期プロジェクト、という”階段”を地域全体で共有するイメージです。
実体験③ 小さな”人材育成プロジェクト”が変えた空気
僕が見てきた中で特に印象に残っているのは、ある地方都市で行われている「高校×地元企業×大学」の三者連携プロジェクトです。
プロジェクトの構成:
- 高校生:地域の課題を調べ、企業にインタビュー
- 大学生:プロジェクトの設計やファシリテーションを担当
- 企業:課題を提示し、現場の声を共有
ある年のテーマは「若者がこの街に住み続けたくなる理由」でした。
高校生グループの一人は、発表の中でこう言いました。
「正直、今までは”地元に残る=負け”みたいに思ってました。でも、話を聞いてみると、地元だからこそできる仕事もあるんだなと思いました」
会場の前列で聞いていた中小企業の社長は、その一言を聞いて少し目を潤ませていました。
「俺ら、ちゃんと説明してこなかったんだなぁ」
このプロジェクトをきっかけに、参加した高校生の一部が地元企業でのインターンに参加、大学生が卒業後に地域で起業という動きも生まれました。
正直なところ、若者流出という大きな波を「一つのプロジェクトで止める」ことはできません。ただ、こうした小さな接点の積み重ねが、10年後の数字にじわじわ効いてくるのは確かだと感じています。
よくある質問(FAQ)
Q1:若者流出の一番の原因は給与の低さですか?
給与も要因の一つですが、調査では「やりたい仕事がない」「成長できるイメージが持てない」ことも大きな理由として挙げられています。給与だけでなく、キャリアの見えやすさが重要です。
実際のところ、同じ給与なら「成長できる環境」や「チャレンジの場」がある企業が選ばれやすくなっています。
Q2:人材育成の効果が出るまでどれくらいかかりますか?
規模にもよりますが、3~5年で「応募数・定着率・Uターン人数」に変化が出る事例が多いです。短期ではなく中期の投資と考えるのが現実的です。
初年度は認識変化、2年目以降に採用・定着の改善というフェーズが一般的です。
Q3:地方の中小企業ができる、人材育成の一歩目は?
- 高校や専門学校への出前授業
- 1~2名のインターン受け入れ
- 学生向けの会社見学会
など、小さな取り組みから始めるのがおすすめです。
まずは「地元の若者が知る機会」を作ることが最初のステップになります。
Q4:自治体としては何をすべきですか?
企業・学校・NPOなどをつなぐ「場づくり」と、「成功事例の共有」が重要です。また、プロフェッショナル人材や地域おこし協力隊などの制度活用も効果的です。
自治体は「プレーヤー」というより「ハブ」としての役割を果たすことが重要です。
Q5:若者を無理に地元に引き留めるのは逆効果では?
その通りです。外に出ること自体を否定せず、「戻れる・関われる理由」を用意するほうが、長期的にはプラスになります。
むしろ「外で成長した後に地域で活躍できる人材」の方が、地域にとって価値が高い場合も多いです。
Q6:地方人材育成に予算をどれくらいかけるべきですか?
一概には言えませんが、採用コスト(求人広告・紹介料など)と比較して、「3~5年でペイできるか」を基準に考える企業が多いです。
人材育成は採用活動の「前投資」として位置づけることで、予算配分の優先順位も上がりやすくなります。
Q7:どこから相談すればいいか分かりません
まずは、地元の商工会議所・金融機関・自治体の産業振興担当などに相談するのがおすすめです。人材育成や産学官連携の窓口を紹介してくれることが多いです。
最初の一歩は「相談」です。プロのネットワークを活用することで、効率的に進められます。
まとめ
- 若者流出は「給料が低いから」という単純な話ではなく、「地元で成長できる未来が見えない」ことが大きな要因です
- 地方人材育成の役割は、「若者を外に出さないこと」ではなく、「出ても戻れる・関われる理由を教育段階から一緒に作ること」です
- 失敗を避けるには、単発イベントではなく、「教育→仕事体験→就業→関わり直し」の線を地域ぐるみで設計する視点が欠かせません
要点をあらためて整理すると、
- 若者流出は、地域側の「仕事の見せ方」と「人材育成の設計」で変えられる余地がある
- 小さな連携(1社×1校×1テーマ)から、3~5年かけて信頼と人の流れをつくっていく
- 公的な制度や外部のプロ人材をうまく活用することで、現場の負担を減らしながら前に進める
そしてもし今、検索窓に「若者 地元 戻らない」「地方 人材育成 何から」と何度も同じ言葉を打ち込んでしまっているなら、今日は検索を一度閉じて、地元の高校・大学・商工団体・自治体のうち、どこか一つに「若者と地域をつなぐ取り組みを一緒に考えたい」とメールを送ってみてください。
その一本の連絡が、数年後に「若者がまったくいない地域」から「少しずつ戻ってくる地域」へ変わる、小さくて大きな第一歩になります。
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