授業で活用!YouTube『論語物語』が育む「志と人間力」— マイスター高等学院が大切にする古典教育

はじめに:これからの日本に必要な人材とは

みなさんは、将来どんな仕事をしたいと考えていますか。大工さん、農業の専門家、介護のプロ、製造業のスペシャリスト。日本の地域を支える仕事には、たくさんの魅力があります。

しかし今、日本全体で深刻な問題が起きています。それは「労働者不足」です。特に地域の産業を支える現場では、技術を持った人材が圧倒的に足りていません。この課題を解決するために、マイスター高等学院は設立されました。

私たちの学院は「日本を守る人材育成の場」として、大工をはじめとする現場実務者、つまり「マイスター」を育てることを目的としています。通信制高校と連携しているので、職業教育を受けながら高校の卒業資格も取得できる仕組みになっています。

ただし、技術だけを身につければ良いというわけではありません。マイスター高等学院が最も大切にしているのは「志」と「人間力」です。この二つを育てるために、私たちは授業でYouTubeの『論語物語』を活用しています。

なぜ古典なのか。それは、どれだけ技術が進歩しても、その技術を使う人間の心がしっかりしていなければ、社会から信頼されないからです。今回は、『論語物語』がどのように生徒たちの「志と人間力」を育み、未来のマイスターを育成しているのかをお伝えします。

「志」を育てる:社会のために働くということ

マイスター高等学院が育てたい「志」とは、単なる個人の夢や目標ではありません。それは「自分の技術を使って、社会の課題を解決したい」という強い思いのことです。

たとえば、大工の技術を学んでいる生徒がいるとします。その生徒が「立派な家を建てたい」と思うだけなら、それは個人の目標です。しかし「地域の人々が安心して暮らせる住まいを提供したい」「高齢者が住みやすいバリアフリーの家を作りたい」と考えるようになれば、それが「志」です。

公益という考え方

『論語』には、人間として生きるべき道や、他者への敬意、社会に対する責任について書かれています。現代風に言えば「公益」、つまり社会全体のためになることを考える姿勢です。

マイスター高等学院の卒業生が就職を目指す企業は「未来創造企業」と呼ばれています。これらの企業は、事業を通じて継続的に社会課題を解決することを第一の目的としています。単に儲けるだけでなく、社会に貢献することを真剣に考えている企業なのです。

『論語物語』を通じて古典に触れることで、生徒たちは「自分の技術がどう社会に役立つのか」を深く考えるようになります。たとえば、将来開校予定の農業コースでは、食料自給率の向上や地域の食文化を守ることが「志」になるでしょう。

私益と公益のバランス

もちろん、仕事をする以上、給料を得て生活することも大切です。これを「私益」と呼びます。未来創造企業が目指すのは、私益と公益のバランスです。

『論語』の教えを学ぶことで、生徒たちは「自分が豊かになることと、社会に貢献することは、矛盾しない」という21世紀型の企業理念を理解します。この考え方が身につくと、卒業後も長く社会で活躍できる土台ができあがります。

実際に授業では、『論語物語』のエピソードを見た後、グループディスカッションを行います。「この教えは、現場でどう活かせるだろうか」「お客様に対してどんな姿勢で接するべきか」といった具体的な話し合いを通じて、古典の知恵を自分たちの将来に結びつけていくのです。

「人間力」を磨く:現場で求められる協調性

技術がどれだけ優れていても、一人では仕事は完成しません。現場には必ず仲間がいて、お客様がいて、取引先がいます。そうした人々と良い関係を築き、お互いに幸せになれる働き方をすることが「人間力」です。

関係主体幸福度という考え方

マイスター高等学院では「関係主体幸福度」という言葉を使います。これは、自分だけでなく、関わるすべての人が幸せになるという意味です。専門用語で言えば「共益」です。

たとえば、大工の現場で考えてみましょう。自分が丁寧に仕事をすれば、お客様は満足します。一緒に働く職人仲間も気持ちよく作業できます。材料を提供してくれる業者さんも信頼してくれます。こうしてみんなが幸せになる関係が「共益」なのです。

『論語』には、家族との関係、師匠と弟子の関係、友人との付き合い方など、人間関係の基本がたくさん書かれています。これらの教えは、現場での協調性を高めるために非常に役立ちます。

双方向の価値提供

ここで大切なのは「双方向性」です。未来創造企業は生徒に技術を教え、働く場所を提供します。同時に、生徒も企業に対して真面目に働き、良い成果を出すことで価値を提供します。これが双方向の関係です。

マイスター高等学院では、生徒が3年間の有期雇用契約を結んで実際に働きながら学びます。この期間中、生徒たちは「敬意」「誠実さ」「責任感」といった人間力の基本を実践で学びます。

しかし、これらの基本は突然身につくものではありません。『論語物語』を通じて古典の知恵に触れることで、現場での実践がより深い意味を持つようになるのです。

授業では、実際の現場であったエピソードを共有することもあります。「先輩から厳しく指導されたけれど、その意味が『論語』の教えで理解できた」「お客様との会話で、敬意を持って接することの大切さを実感した」といった声が生徒から聞かれます。

信頼される人材になるために

現代社会では、技術力が高いだけでは不十分です。その技術を倫理的に使い、社会から信頼される人間であることが求められます。

21世紀型企業の基準

未来創造企業は、非常に厳しい基準で選ばれています。具体的には「地球」「社会」「地域」「顧客」「取引先」「従業員とその家族」「経営者」という7つの分野で評価されます。

これは単に売上が良いとか、技術が優れているという基準ではありません。環境に配慮しているか、地域に貢献しているか、従業員を大切にしているかといった、総合的な視点で企業の価値が判断されるのです。

このような企業で働くためには、技術だけでなく、倫理観がしっかりしていることが必要です。『論語物語』を通じて学ぶ教えは、まさにこの倫理的な基盤を作ります。

働きやすい環境での成長

未来創造企業は、福利厚生や労働環境についても一定の基準をクリアしています。つまり、生徒たちは「安心して働ける会社」に就職できるということです。

このような信頼性の高い環境では、技術力だけでなく、他者との調和や誠実さが特に重要になります。『論語物語』で培われた人間性は、信頼できる環境でこそ最大限に発揮されます。

実際に現在在籍している大工コースの生徒たちは、働きながら学ぶ中で、職場の先輩たちがどれだけ人間関係を大切にしているかを目の当たりにしています。「技術は見て盗めるけれど、人間性は日々の積み重ね」という先輩の言葉が、生徒たちの心に響いています。

また、企業側も生徒の成長を長期的に見守ってくれます。3年間の有期雇用期間は、単なる試用期間ではなく、お互いに理解を深め、信頼関係を築く大切な時間なのです。

現場での経験を深める古典の知恵

マイスター高等学院の最大の特徴は、3年間の有期雇用契約を結んで働きながら学べることです。この実践的な経験の質を高めるために、『論語物語』が大きな役割を果たしています。

困難を乗り越える力

現場での仕事は、いつも順調とは限りません。技術的な壁にぶつかることもあれば、人間関係で悩むこともあります。そんなとき、どう乗り越えるかが重要です。

『論語』には、逆境に直面したときの心の持ち方や、学び続けることの大切さが書かれています。たとえば「学びて時にこれを習う、また説ばしからずや」という有名な言葉があります。これは「学んだことを実践して身につけていくのは、なんと嬉しいことか」という意味です。

現場で失敗したとき、この言葉を思い出せば「失敗も学びの一部だ」と前向きに捉えられます。こうした精神的な支えがあるからこそ、生徒たちは3年間の実務経験の中で、粘り強く成長できるのです。

卒業後のキャリア

マイスター高等学院を卒業した生徒は、学院を運営する企業に正社員として就職します。つまり、学生時代から一貫したキャリアを積めるということです。

このシームレスな移行は、技術だけでなく、学生時代に培った「志と人間力」も継続して活かせることを意味します。『論語物語』を通じて養われた倫理観は、長期的なキャリアを通じて、社会貢献という目的を見失わないための羅針盤となります。

現在、2025年時点で当学院は開校から3年目です。まだ卒業生はいませんが、2026年4月には記念すべき第1号生が誕生します。大工コースで技術と人間性を磨いてきた彼らが、どのように社会で活躍するのか、私たちも大きな期待を寄せています。

生徒たちは、技術指導を受けながら、週に一度『論語物語』を視聴し、その内容について語り合います。最初は「古臭い」と感じていた生徒も、現場での経験と結びつけることで「こういうことだったのか」と納得する瞬間が訪れます。

マイスター高等学院の教育理念

マイスター高等学院が『論語物語』を授業に取り入れているのは、当学院自体が「持続可能な社会づくりに貢献する教育機関」であるという理念を体現するためです。

実学と人間性のバランス

通信制高校と連携することで、高校の卒業資格を取得しながら、実践的な職業教育を受けられる。これがマイスター高等学院の強みです。しかし、単に技術を教えるだけでは不十分だと私たちは考えています。

現代の教育は、知識を詰め込むことに偏りがちです。しかし本当に大切なのは、その知識や技術をどう使うか、つまり人間性です。技術習得の現場であえて古典を学ぶのは、「技術を使う人間の心こそが社会を変える」という当学院の哲学を示しています。

実際、生徒たちからは「技術だけ学んでいたら、ただの作業員で終わっていたかもしれない」「『論語』を学んだことで、自分が何のために働いているのかが明確になった」という感想が聞かれます。

地域産業の担い手として

マイスター高等学院の使命は、地域産業の担い手を育成することです。現在は大工コースのみですが、来年以降、農業をはじめとする他のコースも開校予定です。

どのコースでも共通するのは、技術と人間性の両方を大切にする姿勢です。『論語物語』で学ぶ古典の知恵は、どの職業にも応用できる普遍的な価値を持っています。

地域の産業を支えるには、技術力はもちろん必要です。しかし同時に、地域の人々から信頼され、長く愛される人材でなければなりません。そのために必要な人間性を、私たちは古典から学んでいるのです。

第1号生への期待

2026年4月、マイスター高等学院から第1号の卒業生が誕生します。彼らは3年間、技術を磨きながら『論語物語』を通じて人間性も育んできました。

試金石としての意味

第1号生の活躍は、マイスター高等学院の教育理念が正しかったかどうかを示す試金石となります。技術力が高いだけでなく、社会貢献への志を持ち、人間関係を大切にする。そんなマイスターが社会に出ていくことを、私たちは心から期待しています。

未来創造企業という厳しい基準をクリアした職場で、彼らがどのように公益と私益を両立させるのか。関係主体幸福度を実現し、周囲の人々も幸せにする働き方ができるのか。その成果が、やがて日本の未来を変える力になると信じています。

継続する教育の価値

第1号生が卒業した後も、マイスター高等学院の教育は続きます。毎年、新しい生徒たちが入学し、技術と人間性を学んでいきます。

『論語物語』という古典を軸にした人間性教育は、時代が変わっても色あせることのない普遍的な価値を持っています。むしろ、技術革新が加速する現代だからこそ、人間の心を育てる教育が重要になっているのです。

私たちは、これからも「志と人間力」を持ったマイスターを育て続けます。それが、労働者不足に悩む日本の地域産業を支え、未来を明るくする最良の方法だと確信しているからです。

まとめ:古典が未来を創る

マイスター高等学院が授業でYouTubeの『論語物語』を活用しているのは、技術教育と人間性教育を融合させるためです。

技術がどれだけ進歩しても、それを使う人間の心が育っていなければ、社会から信頼されません。逆に、技術力と人間力の両方を持った人材は、どんな環境でも活躍できます。

『論語物語』から学ぶ「志」は、社会全体の公益を追求する姿勢を育てます。同じく学ぶ「人間力」は、関係主体幸福度を実現し、周囲の人々と共に成長する力を与えます。

現在在籍している大工コースの生徒たちは、3年間の実務経験の中で、この古典の知恵を日々実践しています。技術的な指導を受けながら、人間関係の大切さ、社会貢献の意義を深く理解しています。

2026年4月、第1号の卒業生が未来創造企業という信頼性の高い環境で働き始めます。彼らが社会で活躍する姿は、マイスター高等学院の教育理念が正しかったことを証明するでしょう。

技術と人間性。この二つを兼ね備えたマイスターこそが、日本の地域産業を支え、未来を明るくする存在です。古典の知恵を現代の職業教育に取り入れることで、私たちは次世代の担い手を育て続けます。

それが、マイスター高等学院の使命であり、誇りです。

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